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浦和地裁昭60・4・22判決
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目次
【事案の概要】
【判決要旨】
【解説】

 

浦和地裁昭60・4・22判決(小学校4年生男児による相手の足元に滑り込み転倒させるいじめについて一般的抽象的な指導では足りないとして浦和市の責任が認められ、加害児童保護者の責任も認められた事例)

 

【事案の概要】

浦和市立小学校4年生であった加害児童は、同級生の被害児童の背後から被害児童をめがけて足から滑り込みをかけ、被害児童の両足の間に自己の片足をさし込んで、被害児童の片足を引掛けたため、被害児童はバランスを失って前向きに転倒し、廊下の床面に激しく顔面を打ちつけた。この結果、被害児童は、上左右各第一歯破折脱臼、同各第二歯脱臼、下左右第一ないし第三歯知覚過敏症の傷害を受けた。 被害児童は、浦和市、加害児童の保護者に対して、損害賠償を求めて提訴した。

【判決要旨】

1 浦和市の責任
「小学校の校長ないし教諭が、学校教育の場において児童の生命、身体等の安全について万全を期すべき条理上の義務を負うことは、学校教育法その他の教育法令に照らして明らかである。
そして、右義務の具体的内容のうちには、集団生活を営んでいくうえに必要な人格教育や予想される児童間の事故を防止するために必要な事項についての教育を施すべき義務をも包含するものであり、この点において、とくに児童と日常接触する学級担任教諭の右指導義務は、教諭の職責の中においても重要な地位を占めているものと考えられる。
従って、小学校の学級担任教諭としては、児童の生命、身体等の保護のために、単に一般的、抽象的な注意や指導をするだけでは足りないのであって、学校における教育活動及びこれと密接不離な生活関係に関する限りは、児童の一人一人の性格や素行、学級における集団生活の状況を日頃から綿密に観察し、特に他の児童に対し危害を加えるおそれのある児童、他の児童から危害を加えられるおそれのある児童については、その行動にきめ細かな注意を払って、児童間の事故によりその生命、身体等が害されるという事態の発生を未然に防止するため、万全の措置を講ずべき義務を負うものというべきである。」
「教諭丁原は、本件事故が発生するかなり以前から、原告が同組の男子児童から集中的、かつ、継続的に暴行を受け又は悪戯をされている事実を認識していたばかりか、本件事故の約一か月前には、それまでにも数回にわたり善処を求めたことがある花子から、警告ともいえる強い調子の訴えを受けたのであるから、遅くとも右の時点においては、男子児童による原告の『いじめ』の事態が容易ならざる深刻なものであることを認識し、かかる事態を解消するため、抽象的、一般的な注意、指導に止まらず、抜本的には、児童による集団討論、いわゆるいじめっ子及び原告との個別面接等の方法によって、右のような『いじめ』の真因を解明し、家庭とも協力してその原因の除去に努めるべきことはもとよりであるけれども、当面、組の男子児童に対し、軽度の暴行又は悪戯からも生命、身体等の損傷に連なる不測の事故が起りうることをくり返し、真剣に説いて、原告に対する暴行を止めるよう厳重に説諭すべきであった。とくに、原告の本件傷害の原因となった『ズッコケ』という悪戯は、前記のとおり、対象者の不意を突いて、その足元附近に勢いよく滑り込みをかけるというものであって、たとえ本来は対象者の足を引掛けて同人を転倒させることを目的とするものではないとしても、そのような事態の発生する虞れがきわめて強いことは自ら明らかであり、かつ、そのような事態が生じた場合、その対象者が転倒に伴なって身体を強打し、これにより傷害を受ける可能性のあることもまた明らかであることに鑑みれば、『ズッコケ』なる悪戯は、きわめて危険なものということができるのであるから、教諭丁原としては、その担任の組において頻繁に行われていた右悪戯の内包する危険性を男子児童に説明して、これを止めるよう厳重な注意をなすべきであった。
しかるに、教諭丁原は、時折原告等の女子児童に暴行を加えた男子児童らを教壇の前に呼び出して注意を与え、また、反省会を開いて、暴行被害を受けた児童にその旨を報告させ、自ら加害者を軽く戒めたり、児童らに話し合いをさせたりするなどの措置をとったに止まり、前示のような『いじめ』を根絶するための抜本的、かつ徹底した対策を講じなかったのであるから、この点において教諭丁原は、前記三1に説示したような義務を懈怠した過失があるものといわざるを得ない。」
2 加害児童の保護者の責任
「親権者は、その子たる児童が家庭内にいると家庭外にいるとを問わず、原則として子どもの生活関係全般にわたってこれを保護監督すべきであり、少なくとも、社会生活を営んでいくうえでの基本的規範の一として、他人の生命、身体に対し不法な侵害を加えることのないよう、子に対し、常日頃から社会生活規範についての理解と認識を深め、これを身につけさせる教育を行って、児童の人格の成熟を図るべき広汎かつ深遠な義務を負うといわなければならないのであって、たとえ、子どもが学校内で起した事故であっても、それが他人の生命、及び身体に危害を加えるというような社会生活の基本規範に牴触する性質の事故である場合には、親権者が右のような内容を有する保護監督義務を怠らなかったものと認められる場合でない限り、(学校関係者の責任の有無とは別に)右事故により生じた損害を賠償すべき責任を負担するものというべきである。しかして、被告松夫及び被告松子が、親権者として右のような内容の保護監督義務を果たしたかについては、被告松子本人の供述中に、同被告の家庭では、夏夫に対し、弱い者いじめはしないように云い聞かせていた旨の供述部分があるけれども、かかる説諭のみをもってしては、右のような保護監督義務を尽くしたとは到底いえないし、他に被告松夫及び被告松子において右義務を怠らなかったと認めうる証拠はない。」

【解説】

1 教職員の責任の根拠
本判決は、教職員の責任について、「小学校の校長ないし教諭が、学校教育の場において児童の生命、身体等の安全について万全を期すべき条理上の義務を負うことは、学校教育法その他の教育法令に照らして明らかである」と判示する。
この判示内容は現在では当然のものとして受け入れられているところであり、その他の裁判例でも確認されている。
学校教育法やその他の教育法令は公法に属しており、教職員と児童生徒(あるいはそれらの保護者)との間の法律関係を直接に規律するものではないが、条理や在学関係を媒介としてそれらの間の法律関係を根拠づけるものであるという理解が現在の裁判実務では一般的であると言える。
しかし、現在においてもなお、こうした理解に異議を唱える立場も存在する。
例えば、さいたま地裁平成30年(ワ)第1465号事件において、被告川口市は、いじめ防止対策推進法について、「同法は、いじめ防止等のために、現に教育活動を行う学校や教育行政の衝に当たる地方公共団体等において、教育上・行政上の配慮の必要性を踏まえた上で、その果たすべき役割とともにその防止の為の基本的事項を明らかにするという性質の法であって、個々の条文が、当該条文に規定された者の間における私法上の権利義務関係を規定するものではない」と主張する。これと全く同旨の裁判例も存在する。
しかし、こうした理解は現在ではどちらかというと異端的であり、裁判例の趨勢は、本稿で取り上げた浦和地裁や、上に紹介した長崎地裁福江支部のような理解であると思われる。
実際、福岡高裁令和2年7月14日判決は、いじめ防止対策推進法の規定により策定された基本方針は、それまでの文部科学省の通達や通知をまとめたものであり、それらはいじめ対応に対する知見として学校設置者が履行すべき安全配慮義務の内容を構成し、その違反は国賠法上も違法の評価を受け得ると論じた。
以上に見てきたように、学校教育法その他の教育法令(通達や通知を含む)、いじめ防止対策推進法及びそれに基づく基本方針は、全て教職員の責任の根拠となるものである。
2 教職員の責任の内容
本判決は、教職員の責任の内容について、「児童の生命、身体等の保護のために、単に一般的、抽象的な注意や指導をするだけでは足りないのであって、学校における教育活動及びこれと密接不離な生活関係に関する限りは、児童の一人一人の性格や素行、学級における集団生活の状況を日頃から綿密に観察し、特に他の児童に対し危害を加えるおそれのある児童、他の児童から危害を加えられるおそれのある児童については、その行動にきめ細かな注意を払って、児童間の事故によりその生命、身体等が害されるという事態の発生を未然に防止するため、万全の措置を講ずべき義務を負う」と判示した。
本件では、対象者の不意を突いて、その足元附近に勢いよく滑り込みをかける「ズッコケ」という悪戯によって、被害児童が、前向きに転倒し、廊下の床面に激しく顔面を打ちつけた結果、上左右各第一歯破折脱臼、同各第二歯脱臼、下左右第一ないし第三歯知覚過敏症の傷害を受けた。
また被害児童の保護者も「警告ともいえる強い調子の訴え」を学校側に行っていた。こうした事実関係の下において、被告浦和市は、「時折原告等の女子児童に暴行を加えた男子児童らを教壇の前に呼び出して注意を与え、また、反省会を開いて、暴行被害を受けた児童にその旨を報告させ、自ら加害者を軽く戒めたり、児童らに話し合いをさせたりするなどの措置をとった」等として安全配慮義務の不履行はないと主張したようであるが、本判決は、「抽象的、一般的な注意、指導に止まらず、抜本的には、児童による集団討論、いわゆるいじめっ子及び原告との個別面接等の方法によって、右のような『いじめ』の真因を解明し、家庭とも協力してその原因の除去に努めるべきことは固よりであるけれども、当面、組の男子児童に対し、軽度の暴行又は悪戯からも生命、身体等の損傷に連なる不測の事故が起りうることをくり返し、真剣に説いて、原告に対する暴行を止めるよう厳重に説諭すべきであった。」とその主張を排斥して、被告浦和市の責任を認めた。
いじめ訴訟においては、被告自治体側から、「校長やPTA会長によるいじめ防止授業を実施した」などといった主張がされることもあるが、本判決の判示するところからすると、そうした一般的抽象的措置が安全配慮義務の履行であると認められることはないと言えよう。
教職員には、より具体的な指導が求められる。そしてそのような指導を可能とするためには、しっかりとした事実確認を実施することが必要不可欠である。
3 加害児童の保護者の責任
本件では民法714条の責任が認められた。
同条の責任が認められるためには、加害児童の責任能力が否定されることが前提となる。
責任能力の有無は年齢だけで決まるわけではないが、だいたい小学校4~5年生くらいが境目になると考えられており、本件では加害児童は小学校4年生であった。

※1 例えば、長崎地裁福江支部昭和63年12月14日判決は、「児童の生命・身体等の安全について万全を期すべき義務は、学校教育法上、あるいは在学関係という児童生徒と学校側との特殊な関係上当然に生ずるものである」と判示する。

※2 佐賀地裁令和元年12月20日判決。

※3 福岡高裁判決については、2020年11月3日の別稿にて詳細に紹介したので興味があれば参照されたい。

 
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最終更新日:2021.02.03 ↑ページトップへ
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